受講生からの質問:うまい訳文を作れる思考回路になりません。どうすればいいですか?

実務翻訳講座「実践コース」を受講中のAさんからの質問。

「基礎講座から栗村先生のコメント、WEBに載せてあるよい翻訳例を
自分翻訳と比べたりしていますが、

日本語の引き出し少ないせいか、英語に意味に引っ張られているのか、
なかなかうまい訳が出てくる思考回路になりません。
なにか、アドバイスがあったらお願いします。」

栗村先生からの回答:翻訳に必要な思考回路を手に入れるには

Aさん

和訳は本当にむずかしいですよね。私も今でこそえらそうに講義で「英語に引きずられないように」と言っていますが、ずっと和訳が苦手でした。英訳のトライアルには落ちたことはありませんが、和訳は不合格だったことがあります。納品した和訳がクライアントさんから戻ってきて、全文訳し直しを命じられたこともあります。それでも、こうして20年近く翻訳を続けてきて、最近ようやく、自分でも少し納得いく和訳ができるようになってきたなと感じています。

自然な日本語に訳すのはもちろん大切ですが、一番大切なのは正確に訳すことです。正確に訳すためには、原文の意味を正確に理解しなければいけません。Aさんの前回の6回課題の訳文を読んでみると、原文の意味を正しく理解できていない箇所がかなりあります。こちらの方が大きな課題です。まずは、原文の正しい解釈に徹底的に取り組みましょう。

英和辞書を引けば簡単に対訳が見つかります。でも、それをそのまま使うと、原文の意味と異なっていたり、まさに英語に引きずられた訳語になったりすることがあります。時間がかかっても英英辞書を引いて、英語を英語のまま理解してください。その方が細かいニュアンスまできっちりと理解することができると思います。英英辞書を引いてわからない言葉が出てきたら、さらにそれも英英辞書で引きます。時間がかかりますが、これをすることによって1つ1つの単語の本来の意味を頭に入れることができますし、英語の語感がつかめるので英訳にも大きなプラスになります。

必ず辞書を丁寧に引いてください。例えば第6回課題では、●●●(英単語)は辞書を引きましたか。辞書に「○○○」という訳が載っていましたか。英英辞書を引きましたか。原文を見て、●●●(英単語)だから日本語の「○○○」だろうと推測して訳しませんでしたか。辞書を引くと、●●●(英単語)と日本語の○○○は意味が違うことがわかります。

それともうひとつ。これも6回のコメントに書きましたが、日本語のケアレスミスをなくしてください。「てにをは」、文の掛かり方、主語と述語の対応など、一語一語慎重に訳してください。

英英辞書を引いて原文の意味を正確に理解すること、日本語のケアレスミスをなくすこと。この2点に重点的に取り組んでください。そうすれば、訳文の質がぐんと上がると思います。自然な日本語を目指すのは、それからでも十分です。自然な日本語にすることに気を取られて原文解釈がおろそかになっては本末転倒です。

普段、Aさんが仕事で書いた文書や、口頭での報告などで、Aさんの日本語がわかりにくいと言われたことはありますか。たぶん、ないのではないかな…と思います。翻訳のときだけ日本語が不自然になるとしたら、本来のAさんの日本語運用力にはまったく問題がないということです。原文の意味を正確に理解して、それを辞書の訳語ではなくAさんご自身の言葉で表現できれば、自然な日本語になると思います。長い道のりですので、あせらずに、時間をかけて丁寧に取り組んでください。地道に努力すれば必ず成果は出ます。

次の課題も、時間がかかっても構いませんので、辞書と向き合って丁寧に仕上げてくださいね。お待ちしています。

栗村直美

最後に

Aさんへ栗村先生からのアドバイスをお届けしたところ

「お忙しい中、的確なアドバイスを回答いただいき、
栗村先生に非常に感謝しております。

これまで、このような細かいアドバイスをもらったことがなく、
大変ありがたいことだと思っております。

今後は、栗村先生から注意するように言われた2つのポイントを
守って訳文を作成していくようにします。」

と、とても喜んでいました。

このページをご覧くださったあなたにも、少しでも
参考にしていただけるところがあれば
大変うれしく思っています。

実務翻訳スクール.com 事務局 柳澤 奈津子

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