バイオ・特許の翻訳者さんにインタビューしました

今回はバイオ・獣医学関連の分野の翻訳をお願いしている翻訳者のTさんを迎えてインタビューさせていただきましたので、その内容をお届けいたします。
Tさんにはおもに日本語の論文を英語へ翻訳する案件をお願いしているのですが、ネイティブの校閲者からも評価が高く、立派な実績をお持ちの方です。

また、非常に珍しい分野や新しい研究分野の案件など、大変な原稿でも対応してくださるTさんの実力には脱帽です。引き受け手がない案件などでもこれまでに何度となく助けていただきました。翻訳コーディネーターからすれば、まさに「頼りになる翻訳者さん」です。

けれど、謙虚すぎるほど謙虚な方なので、インタビューの内容からはすごい方のように感じられないところもあるかもしれませんが、翻訳者を目指している方には、きっと参考にしていただける箇所が見つかると思います。

翻訳者になったきっかけ

もう30年以上前の話になりますが、社会人としてのスタートが「コンピュータ分野の社内翻訳者」でした。求人雑誌で、東京小さなコンピュータのソフトウエアの会社の「ドキュメンテーションの翻訳者求む」という募集を見て、飛びつきました。

私は当時、特に翻訳をやりたいと思っていたわけでもなかったのですが・・・
イギリスでの語学留学から戻り、仕事を探していたので、焦っていて、英語を生かせる職場なら何でもよかったのでした。

まだ、パソコンもなくコンピュータそのものが一般に普及していなかった時代、社長や技術部員さんたちから直接手ほどきを受けながら、技術翻訳の道に初めて導かれました。

海外経験は?

大学(英語を専攻)卒業後、1年ほど、イギリスに語学留学しました。

どんなふうに英語を学びましたか?

上記のコンピュータ会社は2年で辞め、しばらくは学習塾で中高生の英語講師をしていたのですが、結婚を機に、きちんと翻訳の勉強をしようと思いました。  

最初、都内の翻訳学校の実務翻訳基礎コースに1年通ったのですが、この講座の先生が素晴らしくて、単なる訳し方のテクニックだけでなく、英語と翻訳の奥深さ、生涯楽しめるような勉強の仕方まで教えていただきました。

その後、だんだんとお仕事がいただけるようになったのですが、いわゆる「何でも屋」で、ネット環境もまだ今ほど進んでいなかった頃でしたから、大変効率が悪く、仕事は煩雑さを極め達成感も低く、いまひとつ楽しくはありませんでした。

何か専門分野を持たねば・・と思ったのですが、文系で、ただの英語屋ですから、自分には何もないことに愕然としてしまいました。

しかし、その頃可愛がっていた犬が、体が弱くて、犬の病気の本をいろいろ読んでいるうち、ふと、獣医学分野をやってみたいという途方もない?!考えが浮かんだのでした。

でも、獣医学の翻訳を教えている講座などどこにもありませんから、人間の医学翻訳の通信講座を主催している著名な先生にいきなりお電話をして、動物が好きなので獣医学の英訳をやりたいけどどうしたらいいでしょうかというと、まずは、人間の医薬分野の基礎からだと言われて、そうですか、ハイわかりました、と、そこでの勉強を始めたのでした。その努力の甲斐あって、医薬分野のお仕事も入るようになり、「何でも屋」からは脱皮することができました。

そうしているうちに、今度は、医学よりバイオが面白くなり、バイオをやるなら、やはり特許翻訳もできた方がいいだろうと思い、また東京の学校のバイオ特許講座に1年間通学して集中的に勉強した結果、特許明細書のお仕事も来るようになりました。

このように、通学講座や通信講座をいくつか経験していますが、どれも良い恩師との出会いが翻訳をずっと続ける原動力になったようです。

翻訳歴はどれくらい?

社内翻訳者として、2年、その後かなりのブランクを経て、結婚後に在宅翻訳として再スタートしたわけですが、再スタートしてからも、諸事情によりしばしば中断していますので、通算では、18年足らずでしょうか・・・

年齢からいうと、すでにベテランでなければならないのですが・・

この年数だとまだまだ駆け出しですね。

翻訳実績は?

技術(ライフサイエンス)分野としては・・・医薬(獣医学含め)・バイオを中心とする論文、特許明細書の他、研究所の報告書や、メーカーの社内資料、学会のスピーチ原稿、など多数です。

技術分野以外もいろいろやっており、9割がた英訳です。

当初は「何でも屋」で、それが嫌だったのですが、文系なりに専門分野を持ちそれを軸にできるようになった今は、もっと肯定的な気分になり、どういう原稿を打診されても余裕を持って検討できるようになりました。

先日も、外国人の観光客の方向けの旅行案内など訳してみましたが、楽しかったですね。

翻訳するときに心がけていることは?

一番に考えることは、読みやすい英文にすることです。

長い日本語の難解な文章を、情報内容として過不足ないように、簡潔な英文にするには、どう組み立てたらいいかな・・・と、考えること自体ワクワクします。

使用している辞書は?

昔から一番好きなのは、小学館ランダムハウス英和大辞典です。(それにしても、もう21年も改訂されていませんね!)

動詞、形容詞の使い方など、語法については、ビジネス技術実用英語大辞典V5 英和編&和英編が一番役にたっています。

オンラインの英英辞書
Merriam-Webster Medical Dictionaryとかも、医学関連の単語の語感を確認するのに便利です。

もっとも、専門用語は、辞書レベルではとても足りず、ネット検索が頼りとなりますので、その都度徹底的に探します。

それと、有料で利用している医薬関連の用例集もあります。

どんなことが大変?

これを言い訳にすべきではないと思ってはいるのですが・・・

やはり、文系ですので、細かい技術的内容を理解するのが難しく、クライアント様に質問をお願いしてご教示いただかなくてはならないことがしばしばあります。
また、技術的な意味が分かったとしても、単複の判断ができないこともよくあり、本当に悩みます。

翻訳のために何かしていますか?

普段から、暇さえあれば勉強していればもっと良い翻訳者になれるのでしょうが・・・

ここ数年プライベートでいろいろありまして、何をおいても健康と体力作りが一番と思うようになり、乗馬スクールに通い始めました。

秋晴れの中、サラブレッドに乗って風を切って走るのは最高の有酸素運動で、心身のリラックス効果絶大です!

ちなみに、このように馬が好きで、ずっと獣医学の英訳をやるのが夢だった私が、ついに!競走馬の研究論文のお仕事がいただけるようになり、夢が叶いました。これもWTSさんにお世話になっているおかげだと、心から感謝しております。

当社の印象はどうですか?

柳澤社長さんをはじめ、スタッフの皆さんは、本当に大変有能で、そのうえお人柄も素晴らしく、尊敬できる方ばかりです。

翻訳者ができるだけ仕事がやりやすいようにと常に細かく心配りをしてくださるので、気持ちよく仕事ができます。

私は個人的にいろいろあって、あまり多くの案件をお請けできず、力不足で申し訳ない限りですが・・・
実は柳澤さんとは、WTSさんを設立される以前からのご縁ですし、最強のWTSチームの末席ながら、今後ともご指導賜れましたら幸いです。

翻訳者になるかどうか迷っている方へ

Tさんのインタビューはいかがでしたか?

楽しんでいただけたならとてもうれしいです。

なお、当社の印象についてはべた褒めしてくださっていますが、そこはTさんのお人柄が出ているところだなと受け止めていただければと思います。